福祉の職場におけるワーク・ライフ・バランスの取り組みは、以下の4つの目的を具体化させるために必要と考えられています。
厚生労働省の推計1によれば、介護分野における年間の離職者は22.4万人で、そのうち13.4万人が他産業へ流出しており、保育や障害福祉分野においても、離職防止は喫緊の課題と言えます。そのため、社会福祉法人・福祉施設や社協の「経営戦略」としてワーク・ライフ・バランスを位置づけ、組織力と人員体制を高めていくために有能な福祉人材の確保、定着、育成を実現していくことが必要です。
また、社会福祉法人・福祉施設や社協がワーク・ライフ・バランス対応策を拡充させることは、求職者が応募する際に、「ぜひ、ここで働きたい」と判断する職場の好条件としてのアピールでもあります。
働きやすい職場づくりによって、採用した職員が長期継続により、働くことが実現すると、安定的な福祉サービスが提供できます。利用者と職員との信頼関係は、利用者の安心・安定した生活のいとなみをもたらします。
また、家庭での育児や介護、地域活動への参加、自己啓発等、職員の生活体験の充実は、利用者へのケアや支援においてもプラスの相乗効果をもたらします。
地域や利用者の福祉ニーズが高度化、多様化するなかで、福祉サービスの提供には「総合性」と「専門性」を有する福祉人材が不可欠です。そうした有能な福祉人材がなくして、これからの社会福祉法人・福祉施設等の事業の経営・運営は成り立ちません。
福祉等の仕事は、人間の生命にも関わる仕事であり、個人の生活のいとなみに深くかかわります。それゆえに人間性豊かな福祉の仕事はやりがいあるものです。しかし、ときに、これを担う福祉職員に身体的、精神的な負荷がかかる仕事でもあります。
仕事と生活のバランスのとれた環境をつくっていくことは、職員の心身の健康を保持し、安定的なサービスを提供するうえで重要な課題です。
次世代支援育成対策推進法により、従業員101人以上の企業は、子育て支援に関する行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局に届け出ることが義務づけられています。(100人以下企業は努力義務)
また、2010年11月に発行されたISO26000は、組織の社会的責任についてのガイドラインを示しており、公正かつ労働者の安全と健康に配慮した労働条件・労働環境を整備するなど、雇用慣行の改善は重要な課題のひとつとなっています。
それらを踏まえ、社会福祉法人・福祉施設や社協として、ワーク・ライフ・バランス推進計画を作成し、実行していくことが必要です。そのために、各事業所等の処遇条件、就業規則等の改定や基盤整備を組織として検討し、実現していくことが必要です。